道具等に宿る九十九神(つくもがみ)とは?
色んな職人に作業について見聞きさせてもらうことがあるのですが、その際よくほっこりする瞬間があります。それは、彼らが道具や材料のことを「こいつ」と擬人化して呼ぶとき。「こいつを、こうしてやって……」とか。
そういえば私も広告の仕事をしているとき、レイアウトなどで「この子をこっちへ移動させて……」とか言ってしまったりして。私の場合、文字や画像などの素材に対してですが。だから職人たちが道具や材料を「こいつ」と言ったりすると、「あーこの人も物に愛着があるんだなー」と嬉しくなるんですよね。
日本には、付喪神/九十九神(つくもがみ)という思想があります。つくも神というのは、長い間大切に使われてきた道具などの物に、神や精霊あるいは魂が宿るというもの。そこまでではありませんが、私たちは日々仕事で触れている物に対して、それがその日だけの出会いの物だったとしても、知らず知らず大事に扱っているような気がします。
作業で失敗しないように、どうか上手くいって欲しいという気持ちから物に呼びかける。上手くいけば、つい感謝してしまう。それが道具や材料相手であっても、感謝の気持ちが湧き起れば「ありがとう」という言葉が出てしまう。もしかしたらそういう感情が、つくも神のルーツなのかも知れません。
また一方で、つくも神は人をたぶらかすとも言われています。それはもしかしたら、それらの道具を上手く使いこなせない人が、つくも神のせいにしたかったからなのかも!?いずれにせよ、物を大切にする人に優れた職人が多いような気がしますが、皆さんはどうお考えでしょうか。