木材が水分の抜けた梅酒の実状態になる!?
建築に関して素人の私でも、木材は加工後も息づいているので、しっかり乾燥させて使わなければひびが入ってしまう、ということは何となく聞き知っています。現在は工場で高温乾燥をして時短していますが、昔は木の種類によって約3年~約10年と自然乾燥させていたのだそう。
その昔ながらの乾燥方法の1つが、水中貯木。水分を抜かなきゃいけないのに、水に浸けておくなんて驚き。諸説ありますが、それはいわゆる浸透圧を利用したものとも考えられます。身近なところで例えると、果実酒に近いかも知れません。
年代物の梅酒の梅を取り出してみると、ずっと水分に浸かっていたのに、味がすっかり抜けて干からびていますよね。おそらく木材の水中乾燥も、似たような感じ!?木場の多くが海に隣接していたことから、海水の塩分が影響しているのかも知れません。そうなると、果実酒より漬物に近いでしょうか。
他にも、水に浸すことによって木材の細胞が開き、奥にたくわえられている水分が乾燥時に抜けやすくなる。だから水中貯木をする、という理由も考えられます。人でいうと、お風呂で毛穴が開くといったイメージですね。
昔は船で運んできた丸太を水中で保管する木場が、全国にありました。国産無垢材の需要が減ったり場所を確保するのが難しくなったりと、だんだん姿を消していきましたが。これらの木場は、単に木材を一時保管しておく場所というだけでなく、乾燥にも一役買っていたんですね。
現存する古民家で木材にひび割れが少ないのは、おそらく水中貯木の後、何年もかけて自然乾燥させたから。人工的な高温乾燥では、そうはいかないでしょう。とはいえ、そこは理想と現実。現代でやるには、コストがかかりすぎます。
それに、先人の英知を継承する現代の建築職人がつくる木造住宅が、昔の民家に劣るとは一概には言えません。ないものねだりをするより、現代の職人が心血を注いでつくってくれた、今自分が住んでいる家を、まず大切にしたいものです。