岩手県の民話「大工と鬼六」|名声ではなく技術の評価を求める職人鬼の話!

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わかる人にはわかって欲しい職人の承認欲求!

岩手県の民話に「大工と鬼六」という話があります。急流で、何度橋を架けても流されてしまう川。困った人々は腕のいい大工を探し、流されない橋をつくってもらうことにします。大工は快く引き受けましたが、実際に川の様子を見て、すっかり自信喪失。どうしたものか考え込んでしまいました。

すると川の中から鬼が現れ、大工の目玉と引き換えに、流されない橋をつくることを約束します。鬼の技術は見事なもので、橋げたのない木組みのアーチ橋をサクサクつくっていきます。それをみて大工は感心したものの、やはり目玉はとられたくない。

すると鬼は、自分の名前を当てたら見逃してやるという条件を新たに出します。偶然にも大工は、鬼の女児が歌う手毬唄で鬼六という名前を知り、目玉をとられずに済みました。という話。この話に出てくる鬼は、なんとなく憎めません。目玉をとってやると言っておきながら、困っていると助け舟を出しますし……。

結局は、たぐいまれな技術でつくった橋だということを、わかる人にだけわかって欲しいという承認欲求。だから人々に自分の仕事だと言って恩を売ることもせず、その技術力のすごさがわかる大工にのみ作業をみせたように思われます。

鬼にしてみれば、自分の腕や知識を活かせること、またそれを大工が感心してくれることが喜びだったのではないでしょうか。誰にでも、他人に認められたいという承認欲求はあるもの。ものづくりをする建築職人にも、もちろんあります。

つくったものに自分の名前が刻まれるということはまずありませんが、心血を注いで完璧に仕上げた作品を、自分の仕事だと誰かに知ってもらいたい。それほどの気持ちで日々作業にあたっているのが職人であり、我々が当たり前に使っている家などの建造物なのです。

それらは当たり前にあるものではないということが、この民話から伝わってきますが、皆さんはどう感じるでしょうか。

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