幸田露伴【五重塔】あらすじ|名工が必ずしも名棟梁という訳ではない!

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 1
free画像,五重塔,夕暮れ
スポンサーリンク
レクタングル広告(大)




不屈の職人魂より人望とコミュ力の必要性!

明治の文豪、幸田露伴の不朽の名作「五重塔」。人望厚い源太親方が請けた、谷中感応寺 五重塔建立の大仕事。それを「のっそり」と馬鹿にされる名人肌の大工 十兵衛が、言葉は悪いですが横取り。そしてその五重塔を完成させるまでの、人々の心の葛藤を描いたものです。

十兵衛という大工は、天才的な腕をもっているもののコミュニケーション能力が低く、ゆえに小さな仕事しか回ってきません。そんなとき日頃お世話になっている源太親方が、五重塔建立の棟梁に指名されます。

free画像,マッチ棒,木組み

十兵衛は日頃の恩を欠く形になるのを申し訳ないと思いつつも、勝手に五重塔の精巧な模型までつくり、源太ではなく自分に仕事を任せて欲しいと、感応寺の上人に直談判に行きます。これだけの腕がありながら不遇の境遇にある十兵衛に対する同情。そしてこれを機に、その境遇を打破したいという熱意にほだされる上人。

上人は十兵衛にもチャンスを与えることにし、どちらが仕事を請けるかは、源太親方と十兵衛で話し合って決めるよう促します。源太親方は、今回の十兵衛のやり方に腹立たしさを感じながらも、そこまでいうなら協力しようと申し出ます。

free画像,蓮の花,上人イメージ

ところが十兵衛は、自分が棟梁としてすべてを仕切りたいのだと源太の申し出を断ります。そんなこんなで、最終的に十兵衛に仕事を任せることにした上人。すべてのわだかまりを捨て、棟梁となる十兵衛に再度助力を申し出た源太。

ところが十兵衛は、それさえも断ります。そんな十兵衛を面白く思わない人がほとんど。職人たちは棟梁となった十兵衛の言うことを聞かないばかりか、源太親方の弟子にいたっては十兵衛を闇討ちし、彼の耳を切り落とし肩にもケガを負わせてしまいます。

free画像,熊ぬいぐるみ,包帯

自分を慕う弟子の不始末に、深々と頭を下げる源太。それだけでなく、源太は最後まで十兵衛と五重塔を気遣い続けるのです。やがて五重塔が完成。落成式を前にしたとき、都を超大型の台風が襲います。

源太は五重塔を心配して見に行きますが、当の十兵衛は家族と家にいて動きません。寺から再三見に来るよう言われても、自分はどんな大嵐にも負けない塔をつくったのだから行く必要はない、と言い放ちます。とはいえそんな理屈が許されるはずもなく、結局十兵衛はしぶしぶ寺へと駆り出されます。

free画像,台風の目

そして現場に到着した彼は大嵐の中、塔に上って仁王立ちになり「もし板へぎ一枚でも吹きめくられたら死んでやろう」と豪語します。その間も、源太は人知れず下で塔を護っていましたが、人々は損傷一つなく暴風雨に耐えた塔をつくった十兵衛を名人だと褒め称えるのです。そんな十兵衛の成功を、自分のことのように心から喜ぶ源太――。

「五重塔」は一見、主人公十兵衛の天才的な腕、不屈の精神や男気という職人魂を称賛している小説のようにみえます。ですが私は、棟梁として手腕を振るってきた源太の人間性に心を動かされました。

free画像,丸太置き場,細い丸太束

十兵衛の、このままくすぶってはいられない。恨まれようが何をされようが、自分の類まれなる才能を思う存分発揮したい、という自信や向上心は素晴らしいとは思います。それに彼は、おそらく皆さんがイメージする、頑固で融通が利かない職人気質のモデルケース。その愚直さに好感をもつことでしょう。

ですが当サイトコラム“建築職人の「職人気質=コミュ力低め」というのは単なるイメージ!”でも書きましたが、建築現場ではコミュ力が低いと仕事にならない。しかも棟梁がコミュ障などというのは、あり得ない。それでは大工だけでなく、他職種の職人も迷惑をこうむる。というのを、悪い意味で証明してしまっているのが十兵衛なのです。

free画像,木組み,大工仕事

つまり棟梁として人を動かすには高度な技術力がものをいう、という単純なものではないのです。その人の人望とコミュ力。どんなに腕がよくても、十兵衛のように自分勝手で人望とコミュ力がなければ、ただの腕のいい職人。

その名人技・プライドをすごいとは思っても、人として尊敬できなければ、本当の意味での棟梁にはなれないような気がします。五重塔の主人公は十兵衛ですが、幸田露伴が描きたかったのは、実は源太親方の崇高な生き様の方かも知れません。

使う相手のメンタルや技能のキャパを知る! 宮本武蔵の五輪書(ごりんのしょ)という兵法書をご存知の方は多いかと思います。地水火風空の5部構成...
スポンサーリンク
レクタングル広告(大)




レクタングル広告(大)




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする