ものづくりは100%満足出来ることはない!?
建築職人といっても色々な職種がありますが、今回は私の友人の家具職人の話。以前彼に現場作業を見せてもらったのですが、レベルや図面をチェックすると、下地など必要な材料を丸ノコでカット。その後、家具を組み立てて微調整し、キレイに仕上げて完成。ほんとに、あっという間でした。
当サイトコラム「【建築職人】見えかくれ部分は手を抜いていい場所という意味ではない!」でも書きましたが、もちろん見えないからといって手を抜いていないのは明らか。なので帰りの車内で、「あんなハイスピードで完璧な作業するって、さすが職人だね」と声をかけました。
すると彼、「プレカット材だし工期もあるから、その範囲内でね」と。「やっぱ注文住宅の特注家具とは違う?」と私が聞くと、彼はしばらく考えた末「違わねーわ」と笑ってました。
結局はどんな仕事でも、使う材料や請負う金額に関係なく、完璧なものを目指して作業してる訳だし、それにどんな現場にも工期はある。ならば、材料や工期に制限がなければ完璧なものがつくれるかというと、そうはいかない。
今は完璧にできたと思っても、しばらく経つとちょっとした粗が見えたりする。もうちょいこうしたい、ってところが必ずといっていいほど出てくる。その辺の、もっともっとという欲と、うまく折り合いをつけられるのがプロの職人。自分の感覚だけじゃなく、納品物として文句なしの状態なのかを客観的に判断できなきゃ商売にならない。
つまり、高度な技術と経験がある彼でも完璧には届かず、そしてそんな彼だからこそ「こんなところでいっか」という妥協点が、一般的には完璧レベルに達している、ということを会話の中で知りました。プロの職人といえども、心中ではそういう葛藤を繰り広げていたんですね。
かく言う私も、一昔前に長編小説が某新人賞を受賞し書籍化されました。が、今となってはもう黒歴史でしかありません。ですが彼のいうように、いつまでも妥協せず完璧を追っていたなら、作品が世に出ることもなかった訳です。
彼のような職人の域に達するのは難しいですが、せめて妥協=手抜きとなることだけは避けたいところ。そのためには、ひたすら勉強あるのみのようです。