父親の貫録を見せるより尊敬される方が大事!
とある本に、こんなことが書かれていました。現代の家族というコミュニティで家父長制が消失したのは、床の間や大黒柱のある家に住まなくなったからだ、というような趣旨。それというのも古民家の多くは、壁ではなく障子や襖で部屋を仕切る田の字型の間取り。開放感がはんぱなく、他者の存在を意識せずには暮らせないスタイル。
しかも、祖父母・両親・子供の三世代。大人数での生活が当たり前だったため、そのコミュニティをまとめる家長、つまり父親が絶対的な存在だったからというもの。そして床の間や大黒柱は、家長の財力・権威の象徴だったから。もちろん大黒柱はシンボルとしてだけではなく、家を支える構造材としての重要な働きがあるのは言うまでもありませんが。
しかし間取りや構造体などが現代のようになっていなければ、父親の威厳が保たれていたかというと、それは少々疑問……。戦後、家督相続廃止という政策があったのも無視できませんし、間取りにしてもマンションは依然、田の字型が主流。それに古民家では料理を居室と分離した土間で作っていましたが、今はLDKで家族の顔を見ながら作業できます。
ですから壁によって分離した部屋が増えたことで、家族のコミュニケーションが減った、家父長制が崩壊した。父親のシンボルを持たないのが原因というのは、ちょっと短絡的。そもそも家父長制が良いのか悪いのかわかりませんし、それに在来工法の古民家は間違いなくすばらしいですが、だからといって現代の建築様式を悪者扱いするのは違うかと思います。
家父長制がすたれたのは、法的に家制度を廃止したことや、大家族が減り絶対的リーダーが不要になった辺りが主な原因。また昔は信頼のおける情報源は、親や教師といった身近な大人。自分にはない知識や経験則が、尊敬に値しました。
でも今は、Webでいくらでも情報を拾える時代。反対に親や教師でも情弱な人はいる、残念な大人だったりする、ということが子供の目からもわかるようになってしまった。そのことの方が大きく影響しているように感じられます。
このような時代背景がある訳ですから、仮に床の間や大黒柱があるからとリノベ古民家に家族3人4人で住んだからといって、父親の威厳が復活するとは考えづらいでしょう。それより、動線・通風・断熱・調湿・陽当たり等々を考え、狭くても皆が快適に過ごせる家に住んだ方が、父親の株が上がるかと思います。そういう意味では古民家も、純粋に快適な住まいですが。
そして何より、父親の威厳・貫録・リーダーシップを見せつけるより、たとえ一部分でも子供から「パパのこういうところ、ほんと尊敬する」と言われる大人を目指し、日々勉強した方がいいと思いますが、いかがでしょうか。