差し金はピタゴラスの定理を応用している!
建築職人が使う道具に、金属製の「差し金」というものがあります。曲尺(かねじゃく)ともいいますが、見た目はいたってシンプル。L字型の物差し(長さを測る)や定規(線を引く)の類。ところがどっこい、これがおそろしくハイスペックな道具なのです。
長さを測るのはもちろんのこと、直角・平行線を引く(しなるので、曲線も引ける)。角度を出す、長さを等分割する、といった「けがき作業」(マーキング)に大活躍。
さらに裏側にも、丸目・角目という目盛りがあり、丸太の円周の長さや、その丸太でとれる正方形1辺の長さが、計算せずともわかってしまうのです。
また、差し金をあてて直角三角形を作ることで、勾配の寸法などを立体幾何学的にだすことも可能。これは、鉤股弦(こうこげん)の定理の応用。平たくいうと、あのピタゴラスの定理(三平方の定理)なんですね。
差し金は“見た目は子供、頭脳は大人”的な、とても優れた建築道具。ですからそれを使いこなす職人も、ただ者ではないのです。
“建築職人は、頭が良くなくてもできる”なんて言う人がいますが、どの業界でもその道のプロと呼ばれる人たちは、人知れず勉強し、大変な専門知識を有しているものなんですよ。