トヨタ自動車「前工程は神様、後工程はお客様」
建築における手抜き工事。元請けでは偽装していなくても下請けで行われてしまう、あるいはその逆のパターンもあるかと思います。建築では、それぞれ専門の業者が分業で一つの建物をつくりますよね。それは野丁場だけでなく、町場仕事でも同じこと。
前工程の業者がいい加減な手抜き工事をしたために、後工程の自分たちがその修正をしつつ作業せざるを得なくなり、大変なタイムロスだった。前工程の業者にやり直してもらったため、自分たちの納期がカツカツになり、応援を頼まざるを得なくなった。という話はよく聞きます。
経費削減のための、計画的な手抜き工事。納期に余裕がないための、突発的な手抜き工事。きっちり作業するのが面倒臭いから、というレベルでの手抜き工事……。手抜きは、組織ぐるみのものもあれば、作業員が勝手にやっているものもあるでしょう。
理由はどうあれ、手抜き作業というのは、ほとんどの場合、それを行う本人がわかっててするものではないでしょうか?
戸建てや集合住宅に関して言えば、施主・そこに住まう人たちの存在を無視。誰のために自分が建物をつくっているのか、という本質が忘れ去られちゃっているんですよね。
自分自身や身内がそこの住人になったとしたら、果たしてそんないい加減な仕事を許せるのか?ついでに、自分たちがダラダラ作業するせいで、追い込まれる後工程がいることを気にもしない前工程の業者ってどうなの?って話。
ちなみに、トヨタ自動車では「前工程は神様、後工程はお客様」をモットーにしているそう。自分の出来ない仕事をやってくれる前工程は尊い。同じく自分たちも後工程には不安のないものを提供する。
製造業のみならず建設業でも各業者がそういう心持ちで作業していれば、手抜き工事が減少するのかも知れません。
とにもかくにも、手抜き工事をやるやらないは、最終的には人間性の問題。自分のやってることが、100%完璧だと確信が持てる作業員はそうそういない。だから常に慎重に、不安を押し殺しながら自分を信じて全力で作業しているのが「職人」かと思います。
公私はあっても、どちらも自分の人生。人として職人として、どちらに対しても誠実でありたいものです。