どの業界にもバレなきゃいいという体質はある!?
建築職人の友人知人が数人いるのですが、そのうちの1人に手配してもらい、建築現場を見学したことがあります。電動工具などの作業音が鳴り響き、木っ端などでほこりっぽい。暑さで眼鏡は曇るし、じっとしているだけでも体力消耗。
上も下も障害物だらけで歩きづらく、しかもどこも同じような景色。なので一度トイレで建物の外へでたら、元いた場所へ戻れませんでした。ちなみにこのとき、仮設トイレは二度と使うまいと心に誓いました。
その友人は家具職人。しばらく彼の作業を見学させてもらっていたのですが、何もかも初めて見るものばかり。色々聞きたいことはありましたが、こまめに動きながらすごいスピードで仕上げていくので、こちらは邪魔にならないよう眺めているのみ。
ですが1つだけ、どうしても気になったことがあるので聞いてみました。それは、見えかくれ部分。表からは見えないのに、そこまで丁寧に処置しなくてもいいのでは?ということ。
すると友人。「家具は眺めるものじゃなく、毎日使うものだから、見えないところもちゃんとしておかないと、ガタガタになるでしょ。見えないところは表から見えないってだけで、手を抜いていい場所って意味じゃないからね」と。
なるほど、彼のような元請け下請けばかりだったら、耐震偽装や他数々の欠陥住宅は存在しないのに。と感心させられました。
以前私が、校正のバイトに行っていた制作会社でのこと。社内で校正し校了して印刷所へ回したという原稿が、手違いで私のところへ。こちらは校了原稿とは知りませんから、渡されたものを一から校正。
しかも修正箇所がいくつもありましたから、すでに校了してるなんてまったく思いもしませんでした。ま、こうなっちゃうから、私のような校正・校閲経験者を雇ったというわけでしょうが。
そして校正紙をディレクターに渡すと、思わぬ返事がかえってきたのです。「これはもう印刷所へ入れちゃった原稿。クライアントにも見せてOKもらってる。誰もミスに気付かなかったんだから、それでよかったのに。余計なことしてくれたね!」。
バレなきゃいいという短絡的な思考ですね。結局クライアントには正直にミスを告げ、ペナルティを受けてました。クライアントは制作会社を全面的に信頼し、校正紙をちゃんと見てなかったそう。どのみち、バレないかもってレベルのミスには、私には見えませんでしたから、バレる前に謝っといて正解だったと思います。
このように、どの業界にも、バレなきゃいいという体質は少なからずあるかと思います。でも結局、遅かれ早かれバレるんですよね。瑕疵があると、そこからほころんできますから。建築職人の場合、1つの現場に色んな専門業者が入ります。自分が現場に入ったときには、すでに他業者のミスがあったり。
他人のミスをリカバーしながら、自分の作業をきちんとしなければならない建築職人は、心身ともにキツイ仕事。工期に余裕があることなどまずないでしょうから、なおさらです。家具職人の友人をはじめ、本当に頭が下がる思いです。